心臓病でよく使われる薬
子どもの心臓病の中でも、先天生心疾患は心臓の形の異常をまず手術で治すことが基本になります。薬が必要となるのは、手術前によりよい状態にするため、あるいは、手術後に残った問題に対する治療が必要な場合、そして、心筋症や肺高血圧など薬による治療が中心となる病気などです。
心臓の薬は「何も症状がないから…」と自分の判断で薬を飲み止めてしまうと、病状が悪くなり、危険な状態になる薬もあります。
また、飲んでいる薬によっては日頃から注意しなければならないことがあります。どうしてこの薬を飲んでいるのか、どんな効果があって、どんなことに注意をしなければならないか、主治医の先生や担当薬剤師さんに確認しましょう。
薬を自分の判断で
やめないようにしましょう!

1.心臓病でよく使われる薬
① 利尿薬(りにょうやく)
② 血管拡張薬(けっかんかくちょうやく)
③ β遮断薬(ベータしゃだんやく)
④ 抗血小板薬・抗凝固薬(こうけっしょうばんやく、こうぎょうこやく)
⑤ 肺血管拡張薬(はいけっかんかくちょうやく)
⑥ 抗不整脈薬(こうふせいみゃくやく)

① 利尿薬、② 血管拡張薬、③ β遮断薬は、主に心臓の負担をとるための薬です。
心臓の弁が閉じきれず血液が逆流する時や、心不全(心臓のポンプが弱くなっている)の時などに使います。
①から③の薬を、ミルクを運ぶ馬にたとえて、ミルクは「血液」は馬は「心臓」だとします。馬(心臓)は頑張ってミルクを運ぼうとしますが、馬の元気がないと(心不全など)馬は疲れてしまいます。
① 利尿薬は、ミルクの量を減らしてあげる薬
② 血管拡張薬は、運ぶ坂道の傾斜をゆるくしてあげる薬
③ β遮断薬は、運ぶスピードをゆっくりしてあげる薬
で、これらの効果で馬(心臓)を楽にしてあげることで負担を減らします。
① 利尿薬
ミルクの量を減らす

② 血管拡張薬
運ぶ坂道をゆるくする

③ β遮断薬
運ぶスピードをゆっくりする

①利尿薬
主な利尿薬(カッコの中は商品名です)
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フロセミド(ラシックス®)
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アゾセミド(ダイアート®)
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スピロノラクトン(アルダクトン®)
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トリクロルメチアジド(フルイトラン®)
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トルバプタン(サムスカ®)
など
利尿薬は、ミルクを運ぶ馬のたとえで、馬(心臓)が運ぶミルク(血液)の量を減らしてあげることで、心臓の負担を軽くすると説明したとおり、体の水分をおしっこに出すことで、体の中の血液の量を減らして心臓の負担を軽くします。
利尿薬には、作用時間や副作用に少しずつ違いがあります。病状にもよりますが、幼稚園や保育園などのため、なるべくお昼に薬を飲まないようにしたい、などの希望があれば、担当医と相談しましょう。

≪注意すること≫
たくさん汗をかいた時、熱があるとき、下痢をしている時などは、脱水に注意していつもより多めに水を飲みましょう。
②血管拡張薬
主な血管拡張薬(カッコの中は商品名です)
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エナラプリル(レニベース®)= ACE阻害薬
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ペリンドプリル(コバシル®)= ACE阻害薬
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ロサルタン(ニューロタン®)= ARB
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カンデサルタン(ブロプレス®)= ARB
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バルサルタン(ディオバン®)= ARB
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テルミサルタン(ミカルディス®)= ARB
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オルメサルタン(オルメテック®)= ARB
など
血管拡張薬は、ミルクを運ぶ馬のたとえで言うと、運ぶ坂道の傾斜をゆるくしてあげることで、心臓の負担を軽くすると説明したとおり、血管をひろげて血液を流れやすくすることで、心臓の負担を軽くします。
血管拡張薬の種類はいくつかありますが、よく使われるものは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体遮断薬(ARB)などがあります。
≪注意すること≫
大人では高血圧の薬として使われるため、副作用として、血圧が下がることがあります。下がりすぎると、ぼーっとしたりふらついたりする症状が出ますが、症状がなければ血圧が下がることは薬の効果のため問題ありません。
その他の副作用として、腎臓が悪くなる、咳が出る(特にACE阻害薬)などがあります。症状があれば主治医に相談しましょう。また妊娠中は胎児への影響があると言われているので、妊娠の希望がある場合は主治医に相談してください。
③β遮断薬
主なβ遮断薬(カッコの中は商品名です)
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カルベジロール(アーチスト®)
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ビソプロロール(メインテート®)
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プロプラノロール(インデラル®)
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メトプロロール(セロケン、ロプレソール®)
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アテノロール(テノーミン®)
など
心臓のポンプのパワーが弱くなると、心臓(馬)がパワーがない代わりに、早く血液(ミルク)を運ぼうとして、脈が早くなったり、頑張りすぎたりして、さらに心臓の状態が悪化することがあります。それを防ぐために、心臓が頑張りすぎないようにする薬がβ遮断薬です。脈をゆっくりにしたり、心臓が収縮しすぎないようにしたりします。
他、不整脈を減らす効果や、心臓の筋肉が収縮しすぎておきるファロー四徴症の無酸素発作の予防にも効果があります。
ゆっくりゆっくり!
無理しすぎない!

≪注意すること≫
脈が遅くなりすぎると、ぼーっとしたりふらつきなどの症状が出たりすることはありますが、症状がなければ脈が遅くなることは薬の効果のため問題ありません。何か気になる症状があれば、主治医に相談しましょう。
④抗血小板薬・抗凝固薬
主な抗血小板薬、抗凝固薬(カッコの中は商品名です)
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アスピリン(バイアスピリン®)
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ワルファリンK(ワーファリン®)
など
血液が固まるのを防ぐ薬です。血液は人工物(人工血管や人工弁など)に触れると固まりやすい性質があるため、手術の時に人工物を使った場合は、抗血小板薬や抗凝固薬を使用します。この他、川崎病で冠動脈瘤がある場合にも使用します。
抗血小板薬・抗凝固薬が効かなくなると、重要な血管が血栓(血のかたまり)で詰まったり、人工弁が動かなくなったりして非常に危険な状 態になることがあるため、必ずきちんと飲むようにしましょう。
≪注意すること≫
血が固まるのを防ぐ効果があるため、出血した時に血が止まりにくくなります。強く頭をぶつけた場合は頭の中で出血して時間が経ってから症状が出ることもあります。これらの薬を飲んでいる場合は、サッカーや格闘技など、頭を強くぶつける可能性のあるスポーツは避けてください。小さなお子様には、けがをして血が止まらない時には周りの大人に相談するように説明し、保育園や幼稚園、学校には出血が止まりにくことがあることを伝えてください。また、抜歯や手術、出産などの時に、これらの薬を飲んでいることを必ず伝えてください。
ワーファリンやアスピリンを飲んでいる人は
どんなスポーツが適しているか
主治医と相談しましょう

