どうして何回も手術が必要なの?
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1.どうして何回も手術が必要なの? (動画解説)
音声が出ます
2.どうして何回も手術が必要なの?(テキスト解説)
先天性心疾患の病気によっては、何回も手術が必要です。どうして何回も手術が必要なのでしょうか?
手術の回数は少ないほうがいいのですが、何回も手術が必要な場合の理由は、おもに2つあります。
どうして何回も手術をするんですか…?
手術を複数回する理由① 体が小さいから
1つ目の理由は、体が小さいからです。子どもは大人と違って成長します。体が大きくなると心臓や血管も大きくなります。例えば、体が小さい時にちょうどいいサイズの人工血管を使うと、体は成長しても人工血管は成長しないので、体が成長すると体に対して細くなってしまいます。
体が大きくなると
心臓や血管も大きくなる
体が小さい時にちょうどいいサイズの人工血管を入れると…
体に対して細くなってしまう!
人工血管
細すぎる
このようなことをなるべく避けるために、成長しても使えるサイズの人工血管で手術ができる体の大きさになるまで「準備の手術」をして、少し成長してから人工血管を使う手術をすることがあるため、手術が複数回になります(病気の状態や手術によっては、成長したあとに手術が必要になることがあります)。
少し体が成長して成長してからも使えるサイズの人工血管を使って手術をすると…
少し大きめ
体が成長しても大丈夫!
手術を複数回する理由② よりよい状態で「修復術」を行うため
もう1つの理由は、よりよい状態で「修復術」を行うためです。「チアノーゼって何?」で説明していますが、チアノーゼをそのままにしておくと、いろいろな症状が出るため、チアノーゼのある病気(チアノーゼ性心疾患)では、チアノーゼをなくすことが手術の目標の1つです。もう1つは、心臓に負担の少ない流れにすることです。心臓に負担がかかった状態が続くと、心不全(心臓のポンプが元気がなくなってしまうこと)などになってしまいます。
先天性心疾患の手術のおもな目標2つ
-
心臓に負担の少ない流れにすること
-
チアノーゼをなくすこと
この2つの目標を達成するための手術を「修復術」と言います。そして、修復術のための準備の手術を「姑息手術」と言います。姑息手術は必要があれば2回以上行うこともあります。そして、修復術は最近は2~3歳までに行うことが多いです。
どんな時に「姑息手術」が必要なの?
先天性心疾患のたくさんの病気の中には、肺の血流が多すぎる病気と、少なすぎる病気があります。
肺の血流が多すぎると、肺の血管がいたんで狭くなります。肺の血管がいたんで壁が分厚くなった状態を「肺高血圧」と言います。
血液が渋滞して、
壁にガンガンぶつかる
壁がいたんで分厚くなりさらに渋滞する
肺の血流が少なすぎると、肺の血管が、木に例えると成長せず「枯れ木」のようになってしまうことがあります。
肺の血流が少ない時
肺の血流がちょうどいい時
ここまでをまとめると、とても重要なポイントですが、肺の血流は多すぎても、少なすぎても肺が悪くなってしまいます。そして肺が悪くなると、修復術ができなかったり(手術のリスクが高すぎるなど)、修復術をした後、いい状態にならなかったりすることがあります。よりよい状態で修復術を行うために、姑息手術(準備手術)で肺の血流をちょうどいい量にすることが重要です。
肺の血流は、多すぎても少なすぎても肺は悪くなる
よりよい状態で修復術を行うために、
姑息手術(準備手術)で肺の血流をちょうどいい量にすることが重要
POINT!
肺の血流をちょうどいい量にするための姑息手術(準備手術)は、肺の血を減らす手術と、増やす手術のおもに2種類があります。
肺の血流が多すぎる時に、肺の血流を減らす手術を「肺動脈絞扼術(はいどうみゃくこうやくじゅつ)」と言います。肺動脈の幹または枝をテープなどで絞めて細くすることで血流を減らします。
肺の血流を減らす手術 = 肺動脈絞扼術
肺の血流が少なすぎる時に、肺の血流を増やす手術を、「BTシャント手術/ 体肺動脈短絡術(たいはいどうみゃくたんらくじゅつ)」と言います。腕の動脈の血流の一部が肺に流れるように、腕の動脈と肺動脈を人工血管でつなぐ手術です。
肺の血流を増やす手術= 体肺動脈短絡術
先天性心疾患の手術の全体の流れをまとめると、心臓の形によって、肺の血流が多すぎたり、少なすぎたりするので、肺の血流が多すぎる場合は、肺の血流を減らす「肺動脈絞扼術」。少なすぎる場合は、肺の血流を増やす「BTシャント手術」を行います。肺の血流がちょうどいい量で、体が十分に大きくなったら、修復術を行う、という流れになります。
最後に「どうして何回も手術が必要か?」についてまとめると、1つは体が小さいから。もう1つは、よりよい状態で修復術を行うためです。より良い状態で修復術を行うためには、肺の血流がちょうどいい量であることが重要です
あなたにとって最もよい治療法を、
主治医の先生とよく相談して決めましょう。
最終更新日:2022.6.30