完全大血管転位症
かんぜんだいけっかんてんいしょう
TGA (Transposition of Great Arteries)
1.心臓のきほん
完全大血管転位症について学ぶ前に、いくつか知っておいたほうがよいことを、順番に説明していきます。まずは、心臓の4つの部屋とその役割、どのような順序で血液が体を流れているのか?などについての動画です(5分20秒)
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2.どうしていろんな形の心臓があるの?
先天性心疾患の中には、たくさんの病気の種類があります。そして、それぞれの病気によって心臓の形はちがいます。どうしていろんな形の心臓があるのでしょうか?(3分25秒)
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3.完全大血管転位症について
完全大血管転位症は先天性心疾患の1.8%、約5000人に1人の頻度でおこる病気です。「大血管」は、大動脈と肺動脈のことで、完全大血管転位症は、大動脈と肺動脈の位置が完全に逆の(転位=位置が正常と逆という意味)病気です。どうしてこのような形になっているのか、どのような血液の流れになっているのかについては、動画をご覧ください。(3分57秒)
*この動画を見る前に、動画「どうしていろんな形の心臓があるの?」(前述)を見ると、内容がわかりやすいです。ぜひ、先にご覧ください。
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上の動画でも説明していますが、大動脈と肺動脈が出来る時に、正常では大動脈と肺動脈がねじれた形になりますが、完全大血管転位症では大動脈と肺動脈がまっすぐにできることで、右心室に大動脈、左心室に肺動脈がつながっています。
正常

実際の心臓の形

完全大血管転移症

実際の心臓の形

大動脈と肺動脈が正常と逆につながっていると、血液の流れはどのようになるでしょうか?
完全大血管転位症にはⅠ〜Ⅲ型の3つのタイプがありますが、正常の流れと、完全大血管転位症Ⅰ型と比べてみます。


完全大血管転位症では肺と心臓(左心室):赤のループ、体と心臓(右心室):青のループの2つのループのどこかで動脈血と静脈血が混じらなければ、体には静脈血しか流れず、特にⅠ型は生まれてすぐに強いチアノーゼの症状が出るため、早期に治療が必要です。動画では「チアノーゼ」はどのような状態なのか、どうしてチアノーゼの症状が出るのかを説明しています(3分28秒)。
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最近は、赤ちゃんが生まれる前のエコー(胎児エコー)で見つかることも多く、そのおかげで、生まれる前から診断がついて(「胎児診断」と言います)、心臓の治療が可能な専門の病院で出産することで、生まれてすぐに治療ができることが増えました。

生まれてすぐに、チアノーゼを少しでもよくするために、胎児循環(=お母さんのお腹の中での赤ちゃんの循環)で使っていた2つの逃げ道「動脈管」と「心房中隔欠損孔(卵円孔)」が必要です(胎児循環については「動脈管開存症」で説明しています)。2つの逃げ道で、少しだけ動脈血と静脈血が混じることで、なんとか体に酸素を含む血液を送り出すことができます
動脈管はふつうは生まれた後に自然に閉じてしまうため、動脈管が閉じないようにする薬(プロスタグランジン製剤)を使います。
また心房中隔欠損症(卵円孔)が小さい場合は、カテーテルで広げる治療(バルーン心房中隔裂開術 BAS: Balloon atrioseptostomy)を行うこともあります(カテーテル治療については「カテーテル検査と治療 」のページをごらんください)。
完全大血管転位症 Ⅰ型

