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1.新しい治療法「経カテーテル肺動脈弁留置術」
1.新しい治療法「経カテーテル肺動脈弁留置術」

ファロー四徴症などの疾患で、右心室の出口(右室流出路)から肺動脈にかけての手術を行った後、術後数年〜数十年経って、肺動脈弁の逆流(=肺動脈弁閉鎖不全)がひどくなることがあります。

これまでは、もう一度手術をして人工弁に取り替える「肺動脈弁置換術」しか治療法がありませんでしたが、最近、カテーテルでも治療ができるようになりました。この治療を「経カテーテル肺動脈弁留置術(Transcatheter Pulmonary Valve Implantation: TPVI)」と言います。日本では2023年から実施可能になりましたが、海外では約15年前から実施されている一般的な治療です。

肺動脈弁置換術

日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁置換術

肺動脈弁閉鎖不全に対して、人工弁(※)に取り替える手術です。
手術の問題点は、カテーテル治療に比べると身体への負担が大きいことや、何度も手術をすると心臓の周りがくっついている(癒着)ため手術が難しくなること、などがあります。

※ 人工弁には「機械弁」と「生体弁」があります。

経カテーテル肺動脈弁留置術(TPVI)

経カテーテル肺動脈弁留置術

肺動脈弁閉鎖不全に対して、カテーテルで肺動脈弁を取り替える治療です。

肺動脈弁置換が必要な全ての人がカテーテルで治療できるわけではありません

日本小児循環器学会

画像提供:日本メドトロニック株式会社

年齢や病状、肺動脈の形など、どちらの治療が適しているかは、人によって違います。どちらの治療がよいか、主治医とよく相談してください。

日本小児循環器学会
2.どんな時にこの治療が必要?
2.どんな時にこの治療が必要?

ファロー四徴症などの疾患で、もともと右心室の出口(右室流出路)が狭かったり、肺動脈が細かったりします。修復術の時に右室の出口や肺動脈を拡げる手術(右室流出路形成)を行いますが、この部分が術後数年〜数十年経って、肺動脈弁の逆流(=肺動脈弁閉鎖不全)がひどくなることがあります。

ファロー四徴症の修復術

① 心室中隔欠損孔を閉じる(心室中隔欠損孔閉鎖)
② 右心室の出口から
肺動脈弁・肺動脈を拡げる(右室流出路形成)
③ ムキムキになった右心室を削る(右室異常筋束切除)

日本小児循環器学会 ファロー四徴症の修復術

肺動脈弁は右心室から肺動脈に流れた血液が、右心室に戻らないようにする弁です。肺動脈が逆流すると、肺動脈に流れた血液が右心室に戻ってしまうため、右心室は大きくなり、右心室の負担が増えて、右心室の動きが悪くなります。心臓の動きが一度悪くなると、元に戻りにくいため、適切なタイミングで治療を行うことが最も重要です。

日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁留置術

右心室は大きくなり、右心室の負担が増えて、
だんだん右心室の動きが悪くなる

3.治療の方法は?
3.治療の方法は?

カテーテルを足の付け根にある静脈(大腿静脈)または、首の静脈(内頸静脈) から血管の中に入れます。太いカテーテルを血管に入れるため、麻酔のかかった状態で行います。

内頸静脈

日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁留置術 治療の方法

大腿静脈

1

カテーテルの中に弁を折り畳んだ状態にして、静脈の中に入れる。

日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁留置術
日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁留置術

2

肺動脈までカテーテルを進めて、折りたたんだ弁を、留置したい位置に合わせる。

日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁留置術 治療方法

3

折り畳んでいた弁を慎重に拡げて、適切な位置に留置する。

日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁留置術 治療方法

4

弁が完全に拡がったことを確認し、カテーテルを抜いて終了。

日本小児循環器学会 経カテーテル肺動脈弁留置術 治療方法
4.この治療を行っている病院は?
4.この治療を行っている病院は?

経カテーテル肺動脈弁留置術が可能な病院は限られています。下記のホームページで確認してください。

経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会 

「特に症状がないから」と定期的に病院にかからず、急に具合が悪くなって受診した場合、かなり病状が悪くなっていて、薬や手術などの治療が必要で、その後の生活に影響することが多いです(治療ができないほど悪くなっていることもあります)。

ずっと元気でいられるように、通院や内服の継続が必要な場合は、必ずきちんと病院にかかるようにしましょう。

あなたにとって最もよい治療法を、

主治医の先生とよく相談して決めましょう。

日本小児循環器学会

最終更新日: 2024.1.31

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