しんしつちゅうかくけっそんしょう
VSD (Ventricular Septal Defect)
心室中隔欠損症
1.心臓のきほん
2.心室中隔欠損症について
心室中隔欠損症は、右心室と左心室の間の壁(中隔)に穴があいている(欠損)病気です。心室中隔欠損症は、先天性心疾患の中では最も多い病気の一つです。健診などの時に心臓の雑音で気づかれることが多いです。
日本小児循環器学会 小児期発生心疾患実態調査2020 集計結果報告書より
心室中隔欠損症がどんな病気なのか、まず動画をごらんください。(2分17秒)
音声が出ます
3.どんな症状がいつ出るの?治療のタイミングは?
同じ「心室中隔欠損症」でも、穴の大きさによって症状が出る時期が全く違います。また、穴の大きさによって治療のタイミングも違います。
穴が小さい場合
穴が小さい場合は、穴を流れる血液の量は少なく、ほとんど症状がないこともあります。また、とても小さい場合は自然に閉じることもあるため、大きくなるまでしばらく様子をみることもあります。
ただし、心臓の穴の場所などによっては、小さくても手術をしたほうがよい場合もあります(大動脈弁の変形がある時など)。
穴が大きい場合
穴が大きい場合は、赤ちゃんの頃から、ミルクがたくさん飲めない、体重が増えない、元気がないなどの症状が出ます。
血圧が高い左心室と、血圧が低い右心室の間に穴があいていると、穴を通って左心室から右心室へと血液は流れ、流れる血液は穴が大きいほど多くなります。増えた分の血液は、右心室 → 肺 → 左心房 → 左心室と流れるため、特に「肺」と「左心室」に負担がかかります。
肺にたくさんの血液が流れ過ぎると、肺の血管が痛んで「肺高血圧」という状態になります。ただし、早めに手術をすれば、肺高血圧はよくなることがほとんどですが、長い間、血液が流れ過ぎる状態が続くと、手術の後も肺高血圧が続いたり、その後もさらに悪くなることがあります。左心室にたくさんの血液が流れすぎると、左心室がだんだん疲れて「心不全」になります。
穴が大きいほど「肺高血圧」や「心不全」になるため、早めの手術が必要です。
4.治療の方法は?
心室中隔欠損症は、心房中隔欠損症や動脈開存症のようにカテーテルでの治療は難しく、手術で穴を閉じます。基本的には、穴にあて布(パッチ)を縫いつけることで穴をふさぎます。
一般的な手術に関する説明は、それぞれのページをご覧ください。
パッチ閉鎖
あて布(パッチ)をあてる
5.治療の後は?
適切な時期に手術をした場合、ほとんどの人がほぼ普通の人と同じように生活できて、運動などの制限もなく、薬を飲み続けることもほぼありません(あくまで病状によって異なります)。ただし、穴が大きく、肺高血圧や心不全の状態が長く続くと、手術の後も症状が残ることがあります。病状はそれぞれ異なるため、よく主治医の先生の話を聞いてください。
心室中隔欠損症の手術後の人や、とても小さい穴なので「手術は必要ない」と言われた人の中で、時々大きくなった後や大人になってから「感染性心内膜炎」になることがあります。血液にたまたま入った細菌が心室中隔欠損の周囲や弁などに付いて、高熱が出たり、脳梗塞のような症状が出たり、心臓の弁が壊れて逆流したりすることがあります。また、心臓の中に細菌のかたまりがついてしまった場合は、手術が必要になることもあります。
そして、血液に細菌が入るきっかけで最も多いのが虫歯です。心室中隔欠損症の手術後の人や、小さな穴で手術は必要ないと言われた人は、定期的に歯科にかかって虫歯にならないようにしましょう(→詳しくは「感染性心内膜炎」へ)。
また、ずっと元気でいられるように、通院や内服の継続が必要な場合は、必ずきちんと病院にかかるようにしましょう(→詳しくは「なぜ定期受診が必要?」をごらんください)。
あなたにとって最もよい治療法を、
主治医の先生とよく相談して決めましょう。
最終更新日:2024.1.31